いくら株式市場の勉強不足でも、「あれ売ってこれ買いましょう」的な売買を繰り返していたら「自分は手数料稼ぎのカモにされているのではないか?」と気づくはずです。
最初の東証一部銘柄のあとは、なぜそれを売って別の銘柄を買うのか、またさらにそれを売って他のエクイティ商品を買うのか、顧客にはきちんと理解できていなかったはずですし、私の上司も言葉巧みに金だけはある素人相手に利益を出せるように導くよりも、目先のコミッションに目が眩んだのでしょう。
まぁこんな大人はどこにでもいるわけですが。この上司は酷く他人を妬む、やっかむ人で「苦労せずに楽しく暮らす人を許せない」「学歴コンプレックス」の塊でした。自分で選んだ環境なのにおかしいですよね。
周囲は六大学出身者が多く、地方の旧制帝大卒もふつうにゴロゴロいました。初めから比較しても仕方ないものを比べて妬むなど愚の骨頂です。かといって今の立場を手放してまで大学に入り直す気などさらさらないのですから、矛盾としかいえません。
学歴がない、出世のコースから始めから外れている。じゃあ偏差値の高い大学を出て入社していたら出世コースを歩みたかったのでしょうか?その立場だったらまた別のないものをほしがり、海外駐在とかなんとか耳障りのよい待遇を羨むのではないでしょうか。
ある日、頻繁な売買に不信感を抱いた顧客が「取引明細ではなく、正味いくら儲かったのか教えてほしい」との依頼がありました。上司が答えられるはずもありません。
これまでの売買手数料を差し引いたら利益など出ていなかったのだと思います。私はすでに担当ではなかったので、事務管理の男性社員に計算を押しつけていました。
顧客とのあいだでどんな話をしたのか、どのように納得させたのかはわかりません。けれどおそらく「明るい材料で相場はよくなる」「私を信じてほしい」などの常套句で、田舎の太い客を離すまいと必死に口説いたに違いありません。
頻繁な売買は少し控えて、あまり値動きのない面白味のない銘柄を長く保有させる方向にいったんは落ち着いたようでしたが、私にはもう知る由もありませんでした。