実家は長いあいだ魔窟でした。
高齢親はなんでもとっておけばいつか使う日がくるかもしれないと、読み終えたきょうの健康とか牧野富太郎植物図鑑とかを階段に立てかけていました。
ここ、本棚じゃないし。昇り降りする都度よけながらっておかしいでしょ。
筋力も怪しくなってるのに危険でしょ、また地震がきたらこの本は降ってくるじゃん。
処分しようとすると必ず反対してくる。
私はこのどうでもいい諍い(いさかい)が耐えられなくて、気持ちがふさぎ込むことが多くなりました。
危険だから、命が大事だから、在宅介護するのに邪魔になるから、もう役割は終えたものだから。
言葉を尽くして説明しても強情で要るの一点張り。
生活習慣や生き方そのものに折り合いがつかず、介護以前の問題が山積みでした。
わざわざ新幹線で通って片付けてるのに、在宅介護をする環境にすら辿り着けない。
値がつくと思い込んでいるものが無価値と知らしめるために、BOOK・OFFさんに出張買取りに来てもらい、その場で査定ゼロを証明してみせたり。
自分のやっているくだらないパフォーマンスに辟易していました。
わからない・理解できないことを責めるつもりは毛頭ありません。
役割を終えたものに執着する姿勢に嫌気がさすのです。
最終的には「また震災がきたらこれは凶器。全部ゴミだから」と本棚ごと全て処分してしまいました。私の実家は東日本大震災の被災地でした。
天井までのガラス扉つきの本棚2、作り付け本棚1、普通の本棚3、他にもいくつものカラーボックスの中に訳のわからないパンフレットや冊子の類。
書籍=教養とか勘違いはやめて下さい。優れた本を読んだなら、生き方に反映させましょうよ。